単木ごとの環境は異なる
一昨年は,荒山林業山林の天然林施業の調査を,
去年は,きのこ山施業地を調査する仕事をさせていただいた。
先日は,樹木医さんたちの講習会に参加させて頂き,
菌根菌についての講習を受けてきた。
大学では,ヘクタール単位の広がりで森林の管理を学んできた。
そこでは,一応ヘクタール単位での環境条件は均一,
ないしは考慮に入れなければならないほど異ならないと言う前提であった。
しかし,調査をしてみると,
地形,地質,土壌,水文に依拠する林地の環境は,
実は微細に異なり,単木ごとにその地下部の環境はかなり相違することを,
再認識した。
荒山林業の荒山雅行さんは,林内を案内してくださる際には,
単木ごとに説明してくださった。
その様子を見て,「あの人は貴族的な趣味で林業をしている」
と言う人もいた。しかし,そうは思わない。
メーラーが森林有機体と言っていたのは,
根から大気の水分などの物理的な循環というよりも,
こうした地下から地上への生物的な循環を指したのではないだろうか。
であるとすれば,単木ごとに配慮し,手入れを行うのは当たりではないかな。
特に,広葉樹の場合は。
樹木の細根や土壌動物,菌根菌が活躍する表層土壌の厚さだけでも,
わずか数メートルの間に数倍の差がある。
村尾行一氏の近著にて,メーラーの理論はむしろ広葉樹向きとの事だったが,
私も同感である。