【在りし日の荒山林業山林_奥の院】
元は,有用広葉樹を残しつつ,薪炭利用をしていたミズナラとその他広葉樹の林地。
薪炭利用が廃れたのを機に,徐々に残存させる林木を増やして,
現在のような森林構造になっていったと思われる。
一般の方々はともかく,
多くの林業人は,通直な広葉樹群に驚く。
荒山雅行さん曰く,好きな樹種を残して,少しだけ手を加えたとのことだ。
どのように手を加えたのかは,亡くなった今では知る由もない。
2015年時点で,オニナラタケを確認した。
また,根状菌足やナラタケ菌に寄生するツチアケビの大きな群落も散見した。
地形図と踏査,古い資料から,ここは以前尾根部分が崩落し,
堆積した立地であることがわかった。
また,相当数の湧水点も確認し,地下水位が高く,
菌害に見舞われやすい立地であることがわかった。
こういう場所を,以前,県の普及の方が「スギ林に転換した方がいい」
と言うご指導をされたということだが,
この立地をスギ単相林にしなかったのは,達見と言えると思う。
針葉樹は一般に菌害に強いと言われるが,無敵ではないからだ。
コストをかけて林地を造成しても,地滑りのリスクも高い。
その後も荒山さんは,丁寧に,単木ごとを観察しながら行う広葉樹施業で
この林地を作っていった。
折に触れ,荒山さんはここに案内してくださり,
林木1本1本の解説をしてくださった。
ここは,菌害も多い一方,可食きのこも多く発生するため,
これらを林産物として販売をし,菌害の菌資源への転換を図っていたようだ。
亡くなる半年ほど前,「ここは早く伐りたい」としきりに言っていたが,
調査に入ってやっとその理由がわかった。
ご存命の時からツチアケビが増え始めていたからだった。
2016年の調査では,相当数,クリの腐朽による倒木が確認できた。
おそらく今後,どんどん腐朽が進むに違いない。
残念ではあるが,見方を変えれば,森林が主人を失って
次のステージへ移行しようとしているとも言える。
地滑り地の根株腐朽菌害については,70年代に北大の東先生がそのご著書で
少しだけ触れていた。
その前には,今関六也先生が天然広葉樹林の菌害に触れていた。
実際に拝見させていただき,調査をし,初めてその意味が少し理解できた。