【森林を伐り開く】
弊社演習林。
大変に荒れ果てた,大きめな道路沿いの斜面林で,
ゴミ捨て場になっていたクヌギ林で,
地方中都市の典型的な,価値の低い森林である。
4年前,この森林の小さな区画を自分で購入し,調査を行ったところ,
実はここは大変な生物資源の宝庫であることがわかった。
トンビが営巣し,オオルリが訪れ,ウグイスがさえずり,フクロウの声がする。
ニホンリスが顔を見せ,野うさぎが雪の中をはね,タヌキがそっと死んでいる。
ミツバやノビル,ノカンゾウが収穫でき,カキドオシのカーペットが広がる。
ヤブラン,オオハナワラビ,オモトも林床を飾る。
中心市街地から車でわずか5分,距離にして数キロ圏内のこの山を,
ただのゴミの山にするには惜しいということで,
昨年から,森林・山村多面的機能発揮対策交付金を申請し,
森林を切り拓いている。
昨年度は,過密な森林やヤブを切り開き,
美しいカーブを描く作業路と,小さな歩道を造成した。
今年は森林整備である。
秋には,きのこ山施業を行う予定でもある。
様々な森林や自然関係の専門家が関わるのが,私の職場なのであるが,
この人的資源を生かして,どういう小さな森林造成できるのか,まだわからない。
治山技術者たちによる地形判読調査によって,
本林地は,地下水位が高く,地滑り地形を有した
造林不適地であると判断されたが,この林地を,
どのように価値の高い場所にしていくかはについては,
私たち風致の人間や,植物屋,菌類屋の出番である。
実作業でも,アーバンフォレストリーさんの仕事は相変わらず,美しく,
林道技術者の岩谷さんの各図面は曲線美に溢れている。
この交付金を少しでも有効に使用し,
無価値として放置されていた森林が,どのように蘇るのか,ちょっと楽しみだ。