森と庭の管理人(仮称)

副理事長.森と庭を管理する。

【大木を育てる事の難しさと素晴らしさ】

検査の準備で大わらわですが,ブログ書いちゃいますw

私の師匠である,故・荒山雅行さんは訪ねて行くと必ず,

山の樹木1本1本がどのように育ってきたかを,丁寧に解説してくれました。

大学での授業は,林地を面的に・樹木をマスとして取り扱ってきたので,

どうしてこんな事を自分に長々と話をするのか,さっぱりわかりませんでした。

しかし弟子たるもの,黙って拝聴し,金魚の糞よろしく付いて回っていました。

話は変わりますが,3月の初めにちょっと湿った重たい雪が降り,

朝の散歩で,裏山の公園のおびただしい本数の樹木の枝が,

折れたり,倒木したりしているのを発見しました。

折れた枝をしげしげと眺めていましたが,

Shigo先生のご指摘の通り,枝と幹の接続点が入皮状になっている,

強度が弱くなっている枝々が,雪の重みでベキベキ折れていました。

樹木って,強いようで弱い。

そしてこの折れた場所から,腐朽してさらに弱る可能性も否定できません。

それでも,公園の樹木は個体単位で管理されているので,

何か異変があれば,すぐに気がついてもらえて,何らかの対処がなされるでしょう。

ところが,山の樹木はそうはいかず,

例えば弊社の社有林の広葉樹など,放置期間が長かったせいで,

今年の伐倒では,60年生の樹木が,すでにかなり相当の心材腐朽が見られました。

伐倒された広葉樹を見ながら,大木として長い間生き抜いていけるというのは,

樹木にとって,かなり大変で,確率の低い事なんだという事を実感しました。

社有林を周りながら,はたと思い出したのが,荒山さんの事です。

荒山さんは毎日山へ出かけていました。

でも毎日作業をしていたわけではありません。見回りをしていたのです。

そして,大木にする予定の樹木のちょっとした異変も見逃さず,

その都度対処していたので,

100年近くの立派なカラマツや広葉樹を育成する事ができたのだなあと理解しました。

森林系の市民団体さんや,里山施業をされる方々の記述を読んでいると,

樹木は伐らずに残せば大きくなるので,

残したい樹木は伐倒せずに残せばいいと簡単に書いてありますが,

樹木が大木として残るのは,きっととても確率の低い事だと思いますよ。

そして,樹木を残して大木として育てるというのは,

個体の状態と立地条件などを含め,長きにわたって生きる見込みがあるか判断する事,

そして残した樹木を長い時間,きめ細かく観察し続ける事,対処する事

という知性と愛情と根気が必要な,難しく長大な仕事が待っているのです。

このブログを書きながら,荒山さんの山の大きなカラマツを思い出しています。

おじいさんの代から受け継いだカラマツを,

たった一人で,いかばかり長い間,思いを込めて育ててきたかを思うのです。

 

参考:Alex L. Shigo(1991),Modern Arboriculture

 

樹木は結構簡単に折れたり,腐ったり,倒れたりするんですよね…

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ここまで大きくするのは,大変な手間ですよね…育てた人の心配りや,幾星霜を生き残った事を想像させるからきっと,大きな樹木は人々に愛されるのでしょうね。

荒山林業のカラマツ
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ムジャクフ公園 Park Mużakowski - Poland 

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