【自分にとっての故郷「東京」】
家は転勤族で,国外も含めて10カ所以上転々としていましたので,
東京出身とは言っても,小中高を過ごしただけなのですが,
東京は自分にとっての故郷と思っています。
杉並区に少し,そしてほとんどを,世田谷区奥沢という地域で過ごしました。
この辺りは現在では高級住宅地ですが,当時はまだとても牧歌的で,
近隣の自由が丘も,田舎のもっさりした繁華街という風情でした。
環八のすぐそばに家があり,歩道橋を越えると田園調布の駅が見え,
高校生の時に,当時の校長先生であった東工大の平井聖先生の
田園都市論を拝聴し,自分も空間を作るような仕事をしたいと夢見ました。
自分の人生と居住地域が繋がったのは,この時が初めだったと思います。
私の父は大阪,母は長崎の人間でしたが,この地に住んで,
すっかり東京人のように振舞って過ごしていました。
ところで東京人って何だろうと,先日考えていた矢先
表記の麻木久仁子さんの記事が目に入りました。
【私だけの東京・2020に語り継ぐ】
https://mainichi.jp/articles/20180221/dde/012/040/006000c
「でも私が育ったような住宅地では出身とか、先祖とか、しがらみとかは一切関係なかった。隣に住む人がいかにしてこの地にたどり着けたかなんて誰も問わなかった。今、目の前にいる人の姿が全てだったんです。」
この文章を読み,やっと得心がいきました。
その人の背景に関わらず,みな「東京人」として生きることができる自由,
これが東京の包容力なのだなあと感じています。
今,地方都市の素晴らしい住環境に身を置いていますが,時折ふと,
東京に帰りたいなあと思うことが多くなってきました。
実家は東京を引き払ってしまいましたが,細々と仕事でこの街と繋がっています。
その時はしばしの東京人に戻って,一人ランチで少しだけ肩の力が抜けます。
お堀のそばを歩きながら,ちょっと遠い将来は東京に戻りたいなあと,
最近そんな風に感じるのです。東京は密かな私の故郷です。